雨とテラスと緑とアイス

GLACIELは表参道のメインストリートから少し入った所にある。建物の外観はまるで普通の家のようで、通りからは白い壁と脇にある小さな入り口が見えるだけだが中は意外と広い。テラスにはウッドベンチや観葉植物があり居心地がとてもいい。この日はあいにくの雨だったが、雨が当たって葉が弾けるように動く様子やサンシェードを打つ雨音に五感を委ねてぼんやりとしているといくらでも時間が過ぎてしまいそうだ。
ここで美味しいアイスを食べるなんて最高じゃないか。
表参道はハイセンスな上に街路樹など緑が多く、オシャレ感や高級感にリラックス感も兼ね備えた稀有な街だ。GLACIELはそんな表参道の雰囲気にとても合っている。

絶対的組み合わせ

ショーケースは蓋つきタイプで中が見えないので、代わりにフレーバーの説明書きをじっくり読んでどれにするか考える。
気になったのはタイベリー。人気No.1のラベルが付いていて、説明文にはシャーベットとある。アイスクリームショップの一番人気がシャーベットというのはちょっと珍しい。しかも「バラのような香りをまとっている」という。
店員さんにタイベリーと合わせるフレーバーは何がいいか聞いたところピスターシュをお勧めされた。しかも即答。「〇〇がお勧めです」とか「〇〇を一緒に頼まれるお客様が多いです」ではなく、「僕はタイベリーにはピスターシュを合わせます (キリッ)」と言い切ってくれた。
そうか、分かった。ではタイベリーとピスターシュをお願いする (キリッ)。

タイベリーとピスターシュ

タイベリーとはラズベリーとブラックベリーを掛け合わせた品種で、強い香りが特徴だ。そのシャーベットは一口食べるとハッとするような華やかな甘酸っぱさに、シャリっとした食感も相まって爽やかな味だ。そしてあの説明書きの通り、バラのような気品のある香りがする。色も鮮やかで美しく、明るくてエレガントな貴婦人のようなシャーベットだ。

ピスターシュはとてもクリーミーでまろやかな味。タイベリーとは正反対の印象だ。ピスタチオは食感を残すため半分だけ潰した、いわゆる半殺しの状態。濃厚ではないがピスタチオの風味をしっかり感じる。ねっとりとしたアイスにしっとりとしたピスタチオが混ざってとてもおいしい。

タイベリーとピスターシュを合わせて食べると、シャリシャリとしっとりというふたつの食感の違いが楽しめる。味も甘酸っぱさとまろやかさが被ることなく絶妙に調和して美味しい。なるほど、店員さんが即答で断言してくれたのはこのハーモニーのことだったのか。

ジャージーミルクとポティロン

次に選んだのは秋の味覚の代表・かぼちゃ。フランス語ではかぼちゃをポティロンというらしい。キャラクターの名前みたいで愛嬌のある響きだ。先ほどの店員さんのアドバイスが良かったので今回もポティロンに合わせるフレーバーを聞いてみたら、今度は少し迷いながら、さっぱりしているのが合うからとジャージーミルクを勧めてくれた。

ジャージーミルクはアイスクリームタイプではなく、シャーベットタイプ。ミルクフレーバーでシャーベットのというのはなかなか珍しい。優しく深く香るミルクの風味があり、甘さが控えめなのでミルクの香りが邪魔されることなく口の中に広がる。シャーベットなのでくどさがなくスッと溶けて、気持ちまで優しくなれるフレーバーだ。

ポティロンはほっこりした甘さに、かぼちゃの風味とコクがしっかり感じられる。そこにかぼちゃ特有の少し粉っぽいような食感が美味しさを後押ししてくれる。
ジャージーミルクと一緒に食べるとどちらも優しくほんわりと包んでくれるような印象だ。

最初のオーダーも、2回目のオーダーも店員さんのチョイスが素晴らしい。ふたつのフレーバーの味や食感が被らずそれぞれを十分に味わえる上に、一緒に食べるとうまく調和してまた別の魅力がでてくるのだ。

GLACIELのクリスマスケーキ — 華やかなアントルメグラッセ（アイスケーキ）

生グラスとアントルメグラッセ

GLACIELではアイスクリームのことを生グラスと呼ぶ。グラスとはフランス語でアイスクリームのこと。お店に併設している工房で作ったできたてのグラスをその日のうちに提供するため、作りたてで新鮮であるという意味で「生グラス」と呼んでいるのだ。

GLACIELはアントルメグラッセの専門店だ。アントルメグラッセとはアイスクリームを使ったデコレーションケーキのことで、ショーケースにはパティシエがつくった芸術品のように美しいアイスケーキが飾られている。先日念願のHiloのアイスケーキを食べたばかりだが、次はクリスマスにGLACIELのアイスケーキが食べたくなってきたぞ。